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対馬市の海洋プラごみから生まれたバスケット

九州と韓国の間に浮かぶ長崎県・対馬市は、美しい自然に囲まれた島ですが、実は海洋ごみの漂着量が日本一といわれている場所でもあります。
年間3〜4万㎥もの漂着したごみのうち、回収できるのは約3分の1に過ぎず、その大半がプラスチックです。漁業や観光への影響も深刻で、地域の課題となっています。
アスクルでは、2021年に対馬市とSDGs連携協定を締結して、漂着ごみを資源として再利用する仕組みづくりを進めてきました。その具体的な成果の一つが、「やさしいバスケット」です。
ブイのオレンジ色を活かした商品

航行の目印として使われるブイ(浮標)
海洋ごみのプラスチックを活用した製品は、海のイメージカラーとして従来ブルー系の色味が主流でした。ですが、アスクルの担当者は「ブルーに捉われず、もっとくらしに取り入れやすい色を」と考えました。
そこで、白、黄色、オレンジなどさまざまな色で試作をした結果、鮮やかで発色が良く、透明感もあるオレンジに辿り着きました。顔料を大量に加えれば色は自在に出せますが、それでは海洋プラスチックの素材を活かす意味が薄れてしまいます。
だからこそ、あえて素材のもとである、航行の目印として使われるブイ(浮標)の自然なオレンジ色を活かしながら、美しく映える色を実現することにこだわったのです。
「自然な色味を残しつつ、“これなら使いたい”と思えるものをつくりたかった」。担当者のそんな思いが、新しい価値を生み出しました。
リサイクルだからこその製品化の難しさ

「やさしいバスケット」には、①海洋プラスチックの有効活用で環境にやさしい、②高品質・高機能で使う人にやさしい、③心和むやさしい色合い、という意味が込められている
リサイクル素材を使う製品は、強度や色の安定性が課題です。100%リサイクル素材だけでは耐久性が不足し、実用に耐えられません。
そのため、「やさしいバスケット」はリサイクル素材の適切な割合として、全体の11%に海洋プラスチックを配合。そうすることで、強度と品質を確保しました。
さらに、価格の面では「リサイクル品は安い」というイメージがつきものですが、実際には回収から再資源化して製品化するまでに、通常の製造よりも多くの手間とコストがかかります。だからこそ、イメージとは裏腹にリサイクル品は価格が上がってしまいがちなのが、販売側の悩みでした。
「リサイクルだから良いではなく、買いやすい価格やデザインにすることで、日常で使いたいと思ってもらえることが大事」。そう思い至った担当者は、デザインや使い勝手にもこだわることにしました。
くらしに馴染むデザインと、重ねて使える機能性

「やさしいバスケット」は、やさしい色合いのオレンジに落ち着いたグレーの取手を合わせることで、生活空間に自然に馴染むように仕上げられています。
さらに、取手を内側に倒せば、上にバスケットを安定して重ねることができます。サイズも2種類あり、家庭用から業務用まで幅広く対応できる点もポイントです。
省スペースで収納でき、サイズごとに用途に応じて使い分けられるため、毎日のくらしの中のさまざまな場面で活躍します。

実際の使い道は多彩で、幼稚園や保育園ではおもちゃ入れとして、家庭では洗濯物入れや家の細かなグッズの収納に、工場では工具入れに、アウトドアではキャンプ用品の収納に、さらには買い物かごや店舗の商品陳列にも利用されています。
日常のあらゆるシーンにフィットして、「これが使いやすい」と思ってもらえることを前提に、「実はリサイクルだから環境にいいこともしている」と思ってもらえることを大切にしたのです。
使い勝手とデザイン、価格のバランスを追求することで、商品としての魅力が生まれ、さらにリサイクル素材の使用で環境にも配慮した商品ができました。
バスケットで広がる対馬市の循環の輪
「やさしいバスケット」には、もう一つ特徴があります。商品が1つ購入されるごとに、売上の6%が対馬市に寄付され、海洋ごみの回収や処理に活用されるのです。寄付金は、対馬市の海岸清掃や中継所での分別・処理の資金となり、地域の負担軽減につながります。
さらに、「やさしいバスケット」を製造しているメーカーのリングスターも、海洋ごみ100g削減につき、100円を対馬市に寄付しています。
バスケットをくらしの中で何気なく使うだけで、海をきれいにする取り組みへとつながる。環境保全や地域支援を「特別な活動」としてではなく、日常の選択として取り入れられる仕組みです。
かつて海に漂っていたものが、いまはくらしの中で役立っている。「やさしいバスケット」は、海を守るための新しい役割を担っています。


