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ハワイの自然や動物に囲まれたくらしの中で、身近な幸せを実感
ーー吉川さんは、エシカルなくらしを実践されていますよね。もともと東京にいた頃から、そうしたくらし方に関心があったのですか?
吉川:もともとは興味がなかったというか、エシカルなくらし方があることを知りませんでした。でも、長女を妊娠して、彼女のために必要なものを揃えなきゃって思った時に初めて、私の家にはこれだけ物があるのに、いつどこで誰がどんなふうに作ったのか、何も知らなかったことに気づいたんです。
これから生まれてくる命には、何を買うのがふさわしいのかなって思った時から興味を持つようになりました。
ーーまず、どんなことから始めたのでしょうか?
吉川:最初は、食べ物に関心を持つことから始めました。一部の食品の原材料や生産背景を調べていくと、そこには強制労働だったり、児童労働だったり、想像を超えるようなストーリーがあったんです。
「こんなにキレイにお店に並んでいる商品に、こんな背景があるの!?」と驚きましたし、今まで流行っているから、可愛いから、安いからとか、そんな理由で私は知らないうちにこの背景に加担していたんだと知って、とても悲しくなりました。
ーー背景を知ってしまうと、物事の見え方が変わってしまうことってありますよね。ハワイでは、具体的にどんなふうにエシカルなくらしをされていたのですか?
吉川:ハワイの家には庭があったので、そこで保護したりファームから連れてきたりしたニワトリとウサギを飼っていました。私たちが食べ残したものは、ニワトリとウサギにあげて、それでも残った物は大きなコンポストに入れて堆肥にしていました。
畑もあったので、作った堆肥で野菜やフルーツも育てていたんです。ニワトリとウサギのうんちも畑の土を良くしてくれるし、ニワトリは卵も産んでくれる。そういう小さな循環のある生活をすごく気に入っていました。

ーー素敵! 自然の循環を感じながら生活されていたんですね。
吉川:自分が畑に蒔いた植物の種が育って、収穫したものを料理して食べたり、庭で暮らす動物たちが食べたり……それ以上にときめくことを私は知らないくらいです。たまに、コンポストに虫が生まれることもあるんですけど、それすらもニワトリの大好物だから、良かったねって思います(笑)。
ーー虫さえも、くらしの循環の一部だったんですね。
吉川:昔は苦手だったんですけどね。きゃーきゃー言わずに、ただ見ることから始めたら、だんだんと受け入れられるようになりました。
ハワイの自然の中で暮らすようになってから、それまで外に求めていた喜びや楽しさが、こんなに身近にあるんだ、と気づいたことが大きな発見でしたね。旅行に行ったり、高いものを買ったりして刺激を得なくても、人生って幸せに満ち溢れているんだと気づいたら、毎日がすごく特別に感じられるようになったんです。
ちょっとした行動がお互いをハッピーに。ハワイの人たちが教えてくれたこと
ーーそれは大きな気付きですね。
吉川:そうなんです。今は自分だけの幸せではなくて、「世界中の人が幸せで愛しか持っていなかったら、どんな感じなんだろう?」と考えることがあります(笑)。
遠い国で生きている人たちも含めて、誰もがフェアで幸せであることが、私にとって究極の幸せかもしれないと思いますし、想像したら本当に幸せな気持ちになるんです。
ーーそんなふうに思えるようになったきっかけがあったのでしょうか?
吉川:ハワイでくらし始めた時に、感じたことがありました。ハワイでは、私のことを知らない人ばかりなのに、初対面でもすれ違う時に笑顔を向けてくれたり、エレベーターに乗り合わせたら、「今日はいい天気だね」って話しかけてくれます。
ただそれだけのことなのに、こんなに幸せな気持ちで日々を過ごせるんだって気づいたことは、大きな発見でした。知らない人同士のちょっとしたアクションで幸せにし合えるなら、みんなでそうしたらいいよね、というマインドになりました。
ーー素敵な風土ですね。それはハワイ特有の雰囲気なのでしょうか。
吉川:そうだと思います。LAに1年間、住んでいたこともあるんですけど、その時は全然違いました。ハワイで運転していると、親指と小指を立てて感謝を示す「シャカサイン」をして道を譲り合うけど、LAでは窓を開けて中指を立てられたことがあって……。そういうことをされると、やっぱり私も意地悪な気持ちになっちゃうんですよね。
ーー同じことをし返してやろう、と思ってしまいますよね。
吉川:そうそう。でも、その人はもう通り過ぎて行っているから、全然関係ない人に「じゃあ私も譲れない!」みたいに思ってしまう。人はとても単純なことで幸せにも嫌な気持ちにもなるから、みんなでお互いに優しいことをし合えば、一緒にハッピーになっていけるんじゃないかなと思います。

今日できても、できなくてもいい。無理せず続ける「ひなの流エシカルなくらし」
ーーハワイから沖縄に移住して、今はどんなくらしをされていますか?
吉川:今は畑を作るのが難しくなってしまったんですけど、ゴーヤとトマトとキュウリを育てています。あと、海で子どもたちに素潜りを教えて、魚を突いて食べたり、日々沖縄の人たちの優しさに触れたり。沖縄だからこそ知れることがあるな、と感じながらくらしています。
ーー沖縄でも、自然や人の優しさに触れながらくらしているんですね。今も続けている、エシカルな習慣はありますか?
吉川:基本的には、家で使う食材はオーガニックのもので、洗剤などの日用品も環境に負荷のないものを選んでいます。洋服も動物素材のものは、あまり買わないですね。
寒い時期にどうしてもウール素材のものが欲しくなったら、生産背景を調べてから買っています。子どもたちにも、ものの生産背景についてはなるべく教えるようにしているんです。それを知った上で何を選ぶかは、彼らに任せています。
ーー「自分はこれが欲しい!」という気持ちと「エシカルな選択をしたい」という気持ちのバランスをとるのが難しい時もありませんか?
吉川:そうなんですよね。例えば、ブーツやバッグが必要だけど、動物を利用したレザーをなるべく買いたくないと思った時、目に入るのは安いものやファストファッションのフェイクレザーです。
でもそうすると、今度はどういう労働環境で作られたものなのかが気になってしまう。そんなふうに迷った時は、自分のファーストプライオリティが何なのかを考えて、自分の中で折り合いをつけてから、「今はこれを選ばせてもらおう」と考えて買うことにしています。
ーーなるほど。無理に我慢しなくてもいいんですね。
吉川:エシカルを意識して、以前はマツエクもネイルも我慢していた時期があったんですけど、全然ハッピーじゃなかったんです。なんだか素の爪もまつ毛もかわいくないなと思ってしまって。
それでも2年くらいは頑張って我慢をし続けたんですけど、だんだんと「私は10年以上もラップを買ってないし、ゴミをなるべく出さないようにしているし、ネイルとマツエクくらいは許されるんじゃない?」と思えてきたんです。
できることをできる時にできる人がやっていく。エシカルって、そういう形でいいんじゃないかって。私はこれはできないし、今日はそこまでできないと思った時、代わりに誰かがやってくれているかもしれないし、身近な人なら「私できるから、やっておくね」と言い合える世界になったらいいなと思います。

ーー確かに、エシカルなくらしだけに限らず、何でもいつでも全てを完璧にやるのはほとんど不可能ですよね。
吉川:そうそう! でも、さっきのような発言をすると、「じゃあ、これはどうなんですか?」「どれだけやれているんですか?」と0か100で考えてSNSで指摘したり、怒ったりする人がいるんです。
だから、私が何をしていて何をしていないか、堂々と言うことにしています。「私は今日ネイルをしたけど、その代わりコンポストでこれだけゴミを減らしてますよ」って(笑)。
ーーエシカルな選択や生活をするなら、0か100でやらなくちゃいけない、と思っている人が多いのかもしれませんね。
吉川:そういう私も、実はナチュラリストになり過ぎていた時代がありました。やれることは全部やっていたんですけど、それを突き詰めていくと、「そもそも私って地球にいない方が環境に良いんじゃない?」というところに行きついちゃうんですよ(笑)。
それが100の考え方で、極端過ぎるじゃないですか。そうすると、その100と0の間で自分なりに折り合いをつけていくしかないんですよね。
0の日があってもいいし、今日は10できたなら、明日は50できるかもしれない。それでいいし、みんながそうやって自分のペースでエシカルな選択や生活を続けたら、10年後の地球環境は全然違うんじゃないかな。
買った人も生産者もハッピーになる仕組みで、世の中にインパクトを与えたい
ーー吉川さんは、ナチュラルケアブランドの「hinalea」とエシカルダイヤモンドブランドの「ELENA&C」も手がけているそうですね。ブランドについて教えてください。
吉川:「hinalea」はプラントベースにこだわったオーガニックコスメブランドで、買ってくれた人も生産者さんもハッピーになる仕組みを目指しています。
例えば、製品にタマヌオイルを配合するために、沖縄県池間島のおばあたちにタマヌの実を拾ってもらっています。その分、おばあたちの雇用も生まれているので、お互いにハッピー。
そうした循環で大きな仲間を作ることができたら、世の中に大きなインパクトを与えられるんじゃないかと思って、今は同じ未来を思い描ける仲間を少しずつ増やしているところです。
ちなみにhinaleaは、来年の2月あたりにブランド名を含めてブランドリニューアルを進めていて、新たにヘアケアもリリース予定です。

ーー素敵な循環ですね。「ELENA&C」の方は、どういった経緯で立ち上げたのですか?
吉川:過去に買ったダイヤモンドジュエリーは今も大事に使っているんですけど、ある時、私が輝くために誰かが泣くような生産背景のジュエリーは、もう買うのをやめようと決めたんです。
自分で欲しいと思うジュエリーは、自分で作ることにしました。それで、労働力の搾取がなくて、自然にも配慮して採掘されたエシカルダイヤの認証をとっているダイヤモンドを使って、自分でネックレスをデザインしました。
それをインスタライブでつけていたら、たくさんの人が欲しいと言ってくれたので、ブランドを立ち上げることにしたんです。
ーー自分が変えたいと思ったことを行動に移せる、その行動力がすごいです!
吉川:いつも少し勇気を出して一歩進むと、次に繋がっていくんです。大好きなジュエリーも毎日使うスキンケアも、自分にとって大事なものを100%心地良いものにしたいという気持ちだけで進んできた気がします。
ーー最後に、エシカルなくらしに興味のある人に向けて、メッセージをお願いします。
吉川:一人で取り組もうと思うと、「私が少しゴミを減らしたところで、何が変わるの?」という気になりますよね。そんな時に「私も頑張ったよ」とか、「頑張ってくれてありがとう」と言い合える仲間がいると全然違います。
一人ができることは小さくても、みんなでやったら大きなムーブメントになる。なので、ぜひアクションや思いをシェアできる仲間を見つけてほしいです。
実際にそういう場を作りたくて、オーガニックやサステナブル、ヴィーガンに関心がある人たちで繋がれる「Retreat Garden」という会員制コミュニティも運営しています。もし興味があったら、ぜひのぞいてみてくださいね。今年の11/25まで、第4期生メンバーを募集しています!

編集:株式会社4X
執筆:末光京子
撮影:橋本千尋
ヘアメイク:江指明美(mod’shair)