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美しい対馬を悩ませる、大量の海洋ごみ
九州と韓国の間に位置する、長崎県・対馬。東京23区より広く、島の約9割が森に覆われた、ツシマヤマネコなどの多様な生き物が共存する自然豊かで美しい島です。
ですが、この島は日本で最も深刻な海洋ごみ問題を抱えています。海から流れてきたごみが、対馬の海岸に大量に漂着し、生態系や景観、漁業への影響が広がっているのです。

ごみは漂着してまた海へと流れていくわけではなく、海流や季節風、リアス式海岸の入り組んだ地形によって、島に残ってしまいます。
年間3〜4万m³ものごみは押し寄せる一方で、このままでは、2050年には海のプラスチックごみの量が魚の数を上回るとも言われています。そのうち回収できるごみは3分の1程度で、対馬市の限られた予算では、回収が追いつかないのが現実です。
しかも、流れ着くごみの多くは対馬のものではありません。国境を越えて、世界中から流れ着いているのです。

※出典:環境省「平成29年度漂着ごみ対策総合検討業務(海洋ごみ学習用教材高校生用)」
さらに、漂着するごみの約71%はペットボトルや航行の目印として使われるブイ(浮標)、発泡スチロール、魚網などのプラスチックで、こうしたごみが海洋生物を傷つけ、命を奪い、海そのものを汚染しています。
特にプラスチックは、自然環境の中で細かく砕けていずれ「マイクロプラスチック」となります。自然環境や食べ物を通じて、海洋生物や動物、人間が体内にマイクロプラスチックを取り込んでしまう問題も深刻です。
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市民やボランティア、漁師、企業・団体でごみ回収に尽力
対馬に漂着する海洋ごみは、市民や学生によるボランティア、漁協との連携やNPO団体の協力、企業の協力などのもと、回収されています。
冷蔵庫のような大型の漂着ごみや複雑に絡んだ数メートルの漁網など、回収作業は想像以上に困難です。それでも、少しでも多く回収しようと努力が続けられています。
回収されたごみは中継所に運ばれ、分別・熱処理・埋め立てなどの工程を経て処理されます。プラスチックごみの中でも、PETや発泡スチロールは色別に仕分けされ、粉砕やフレーク加工を経て、再資源化して販売されています。


破砕されてフレーク化した硬質プラスチック
レジ袋からつながった、アスクルと対馬の連携協定
アスクルがこの対馬の海洋ごみ問題に向き合い始めたのは、2020年のこと。環境問題対策で、レジ袋が有料化されたことがきっかけでした。
当時、アスクルでは環境に配慮したバイオマス素材のレジ袋を販売していましたが、それだけではなく、「もっとプラスチック問題に直接関わりたい」と考えた担当者は、調査の中で対馬の現状に出合います。
実際に現地に足を運び、ヒアリングを重ねた担当者は「この問題に取り組みたい」と強く感じるようになりました。
そこで、アスクルでは、レジ袋の売上の一部を対馬の海洋ごみ対策に役立てることを決定しました。その後、対馬市のSDGs未来都市計画とアスクルの資源循環への姿勢が共鳴して、2021年2月にSDGs連携協定を締結。
海洋プラスチックごみを加工した商品の開発や、対馬市への寄付金つき商品の販売などの取り組みを行っています。

対馬でのスタディツアーで直面した、ごみの現実
アスクルでは2023年から毎年、対馬へのスタディツアーを実施しており、多くの社員が参加して対馬の問題について学んでいます。
スタディツアーでは、社員が実際に現地を訪れ、海岸の清掃や処理工程の見学を通じて、現状を肌で感じています。アスクルのマテリアリティ(重要課題)でも重視している、社会課題に取り組む必要性を体感できる他、サステナビリティの今後の取り組みについて検討する機会にもなっているのです。
2024年はリス株式会社と、2025年は大王製紙株式会社とツアーを実施。各社の取り組みの連携が、現地での行動へとつながっています。
実際に対馬に行ってみると、その自然の美しさや雄大さに圧倒されます。対馬固有の生き物や植物が生息する、命溢れる島。一見、遠目から見ると絶景に見える浜辺も、近づけばごみの山です。
ごみの漂着が多いクジカ浜や赤島の現実に直面しながら、ツアーに参加した社員で一つひとつごみを拾いました。清掃後は、クリーンセンターで分別・破砕のプロセスを学び、何が自分にできるかを考えるきっかけとなりました。
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海のために生き物のために、私たちにできること
対馬の海洋ごみ問題は、まだ終わりが見えません。ですが、企業としてまずはできることからと考えて、アスクルではレジ袋やトイレのおそうじシートといった日用品などの売上の一部を対馬に寄付しています。
また、対馬の海洋プラスチックを配合したバスケットやごみ箱なども製品化し、販売。こうした商品の売り上げの一部は、対馬市に寄付され、海ごみの回収や処理に役立てられます。
さらに、海洋ごみ問題について知ってもらうためのイベントを、同じ志を持った企業や団体と共創し、開催しています。
かつて海水浴客でにぎわっていた対馬の美しい海岸は、いまや海洋ごみに覆われ、ツシマヤマネコをはじめとする、固有の生態系も脅かされています。
終わりが見えない問題だからこそ、今できることを一つひとつ積み重ねながら、循環型社会の実現に向けて、アスクルはこれからも行動を続けていきます。


