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エシカルとは?
「エシカル(Ethical)」とは、直訳すると「倫理的な」「道徳的な」という意味の言葉です。最近では、人や社会、地域、環境に配慮する考え方を指しており、「思いやり」の概念に近いといえます。世の中の関心が、社会問題や環境問題の解決に集まりつつある今、私たちのライフスタイルやビジネスに深く関わる概念になってきています。
エコやサステナブル、CSRとの違い
「エシカル」と混同されがちな言葉として、「エコ」「サステナブル」「CSR」があります。
エコは、「環境にやさしい」という意味で使われており、英語の「ecology(生態学)」から派生して生まれた言葉です。例えば、省エネやゴミの削減、節水など、環境保全にまつわるさまざまな取り組みが「エコ」と形容されます。
サステナブルは「持続可能な」という意味の形容詞で、地球環境や社会、経済活動の持続と発展を目指す概念として使われています。また、「サステナビリティ」は「持続可能性」そのものを表す名詞です。
CSRは「Corporate Social Responsibility」の略称で、「企業の社会的責任」という意味です。企業活動をする上で、社会や環境などに配慮した責任ある行動をとり、説明責任を果たしていく考え方を表しています。
つまり、サステナブルが広く環境・社会・経済の持続可能性を目指す考え方であるのに対して、エシカルは倫理面、エコは環境面、CSRはエシカルやエコの観点も含めた企業の姿勢や活動を表しているのです。
エシカルとSDGsの関係性
エシカルの概念は、国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)と深い関係があり、その目標の多くと一致しています。
例えば、エシカル消費の一環として労働環境や人権に配慮した製品を選ぶことは、目標8「働きがいも経済成長も」や、目標1「貧困をなくそう」と関わってきます。また、環境に配慮した行動は、目標13「気候変動に具体的な対策を」や目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」などにも関わるのです。
このように、エシカルな行動や意思決定をすれば、SDGsの複数の目標に対して、日常的なレベルで貢献ができます。
なぜエシカルが注目されているの?
エシカルという考え方が注目を集めている背景には、環境や社会問題への関心の高まりがあります。
例えば近年、問題視されている地球温暖化によって、異常気象や食料生産への影響が起きています。また、ファストファッションの生産過程で強制労働が指摘されているなど、私たちの生活にも関わる社会問題が顕在化してきているのです。
さらに、企業において前述のCSR(企業の社会的責任)の取り組みが広まるとともに、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の要素にも考慮して、投資先の価値を判断する「ESG投資」が広まっているという変化も、エシカルが注目される一因になっています。
このように、人や社会、環境、経済に配慮する考え方が社会全体で活発になってきていることから、「エシカル」という言葉が重要なキーワードとして認識されつつあります。
各業界が抱える課題とエシカルな取り組み
ここからは、さまざまな業界が抱えている課題と、その解決に向けてどんなエシカルな取り組みが行われているのか、ジャンルごとにさらにみていきましょう。
食産業
例えば、食産業のなかでも農業で問題視されているのは、化学肥料の使用による温室効果ガスの排出や環境汚染などです。畜産業でも、牛のゲップによる温室効果ガスの排出や広大な土地利用による環境破壊などが起きています。
こうした課題に対して、食産業では化学肥料や農薬の使用を抑えて、土壌の健康や生物多様性を守る農法を支援している他、温室効果ガスの排出削減を目指して、プラントベース食品や培養肉の開発を進めています。
また、食品ロスも大きな問題です。食料品店や飲食店だけではなく、実は私たちの食卓に届くまでの生産過程においても、食品ロスは発生しています。
そこで、こうした課題に対しても、例えば規格外野菜や余剰食品を使った加工品を販売することで、食品ロスを削減しているのです。
ファッション業界
ファッション業界では、生産過程において大量の水を使用して、大量の合成繊維を海に流出させています。また、多くの衣類が廃棄されている現状もあります。大量生産・大量消費を前提としているファストファッションでは、この問題がより顕著です。
こうした課題に対して、業界では環境への負荷を抑えるために水の使用量を削減できる製造方法を採用したり、再生素材やオーガニック素材を使用したりといった取り組みをしています。大量廃棄に対しては、AIやビッグデータの活用でそもそも売れ残りが出にくい量を生産したり、アウトレットで販売したり、衣類を回収して再利用したりといった対策を講じています。
さらに、低賃金での労働や強制労働・児童労働など、生産現場における人権侵害も問題になっており、ファッション業界では環境や人権面での課題を抱えているのです。
こうした課題への対策として、仕入れ先やコスト構造を公開したり、児童労働や劣悪な労働条件を排除する行動規範を導入したりしている企業も。さまざまな企業が状況の改善に乗り出しています。
化粧品業界
化粧品業界においても、原料に含まれるマイクロプラスチックビーズの海への流出とそれによる海洋生物や生態系への悪影響、美観を重視したプラスチックパッケージや過剰包装による環境負荷が問題になっています。
こうした課題に対しては、天然素材を使用するなど原料の見直しや、使用済み容器の回収と再利用の促進、紙製ボトルの開発、包装の簡略化に取り組んでいる企業も。
また、化粧品の開発過程において、安全性評価のために動物実験が行われることがあり、動物福祉の観点で批判されています。
こうした動物倫理については、動物実験を廃止して、代替法の開発と普及に取り組んでいる企業も多くあります。
エシカルなライフスタイルにはどんなものがある?今日からできるアクションを紹介!
では、私たちはエシカルな意識や行動を普段の生活にどのように取り入れればよいのでしょうか。ここからは、エシカルなライフスタイルの具体例をジャンルごとにご紹介します。
エシカルフードを選ぼう
「エシカルフード」とは、環境や社会に配慮した食品を指します。生産過程において、環境への負荷がかかりにくいオーガニック食品やプラントベース食品を選ぶことで、環境保全につながります。
また、本来廃棄される部分を販売している製品や不揃い品、ワケあり品などを選べば、食品ロスに貢献できます。フェアトレード食品の選択も、適正価格での公正な取引に貢献でき、生産者の生活や自立の支援につながるのです。
食品の購入シーンでこうした意識を持つことで、食における環境・社会問題の解決に参加してみましょう。
「オーガニック」の商品一覧(LOHACO)
「プラントベース」の商品一覧(LOHACO)
「Goエシカル」プロジェクト
エシカルなファッションアイテム・サービスを選ぼう
ファッションを楽しむ際にも、お買い物での商品選択を少し意識するだけで、手軽に環境や社会問題に貢献できます。
例えば、リサイクル素材やエシカルレザー、オーガニック、フェアトレードの素材を使用した製品を選んでみましょう。
また、冠婚葬祭用の服など一時的な用途の服が必要になったら、ファッションのレンタルサービスの活用も検討してみてください。ムダな購入・廃棄の機会を抑えられると同時に、お財布にもやさしい選択ができます。
エシカルなコスメを選ぼう
コスメもリサイクル対応のパッケージを選んだり、詰め替えができるリフィル対応の商品を選んだりすれば、プラスチックゴミの削減ができます。
また、動物実験をしていない「クルエルティフリー」製品を選ぶことで、動物福祉への配慮も可能です。
コスメは定期的な買い替えが必要なものだからこそ、こうした意識を習慣化すれば、日常的に社会や環境に貢献できるといえます。
エシカルなアクションを試してみよう
これからは、人や社会、環境、経済にやさしい世の中を目指して、政府や企業だけでなく、一人ひとりがライフスタイルを見直していくことがスタンダードになっていくはずです。
難しく考えず、食品やファッション、コスメなどの身近で楽しめそうなところから、エシカルな行動を意識してみてくださいね。毎日の何気ない選択を通して、よりよい未来につなげていきましょう。