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サステナブルデザインとは?
「サステナブルデザイン」は、現代のものづくりや建築において重要なテーマです。ここでは「サステナブル」という概念の基本に触れつつ、サステナブルデザインの概要と特徴を解説します。
そもそもサステナブルとは?
「サステナブル(Sustainable)」とは、「持続可能な」という意味で、世界が持続可能な発展を目指せるよう、環境保護、社会的責任、経済的発展などをバランスよく実現するための取り組みを指します。
例えば、限りある資源を大切に使ったり、貧困や格差の解消につながる行動をとったりすることが、サステナブルな取り組みだとされます。このサステナブルの考え方は、「SDGs(持続可能な開発目標)」とも深く関わっています。
2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットからなるSDGsは、サステナブルな社会を実現するための指針であるといえるのです。
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サステナブルデザインの概要と特徴
サステナブルデザインとは、製品・建築・サービスの企画・生産から廃棄・再利用に至るライフサイクル全体を通じて持続可能性を追求するデザインの考え方です。環境汚染の抑制や廃棄物の低減、地域コミュニティとの連携などにも配慮し、環境や社会への悪影響を最小限に抑える設計を目指しています。
国際的には、国連環境計画(UNEP)などが提唱する「Design for Sustainability(D4S)」という手法もあり、サステナブルデザインの実装のひとつとされています。環境だけでなく、社会や経済の持続可能性も高めることを目指しているのが、サステナブルデザインの特徴です。
サステナブルデザインの必要性は?
サステナブルデザインが重要である理由は、製品や建物の従来のデザインにおける問題点から見出せます。
大量生産・大量消費・大量廃棄を前提としてデザインされていた製品は、資源の枯渇や環境汚染を引き起こし、労働環境などにも深刻な負荷を与えてきました。建築におけるデザインでは、森林破壊やエネルギーの消費などの環境負荷、地域コミュニティに配慮していないという課題を残してきたのです。
また近年、環境や社会に配慮した消費行動である「エシカル消費」や、企業の社会的責任を意味する「CSR」への関心が高まっています。「サステナブルであるか」がデザインの評価基準として加わりつつある中で、環境・社会・経済の持続可能性を追求するサステナブルデザインのニーズが広がっているのです。
サステナブルデザインにはどんな種類があるの?
製品と建築におけるサステナブルデザインについて、それぞれどのような種類があるのか、具体的にご紹介します。
製品におけるサステナブルデザイン
環境や社会への負荷の低減を目指す、ものづくりにおけるサステナブルデザインには、さまざまな要素があります。具体的には、次のようなものがあります。
●サステナブル素材の活用
環境や人権に配慮した素材を使用していることも、サステナブルデザインの一つの要素として挙げられます。特に近年は「サステナブル素材」が注目を集めています。
サステナブル素材とは、生産から販売、廃棄に至るまでのライフサイクル全体でサステナビリティを考慮した素材のことです。具体的には、以下のような素材があります。
- リサイクル素材(再生ポリエステル繊維、アップサイクル素材)
- 自然由来の素材(天然素材、バイオマス素材、オーガニック素材)
- 人権や動物に配慮した素材(フェアトレード素材、アニマルフリー素材)
これらの素材を活用することで環境負荷が軽減され、倫理的な消費にもつながります。製品にサステナブルデザインが取り入れられているかどうかを見極める指標として、「どんな素材が使われているか」をチェックしてみましょう。
●リユース・リサイクルしやすい設計
製品の設計において、サステナブルを実現するための工夫を組み込んでいるかどうかも大切です。例えば、リユースやリサイクルがしやすい設計、再利用可能なパッケージの使用、軽量化などがあります。
●省エネ設計やカーボンフットプリント(CFP)の導入
省エネルギー化や温室効果ガス排出量の削減など、製品のライフサイクル全体でのサステナビリティな取り組みも重要な要素です。
温室効果ガスの排出量は、「カーボンフットプリント(CFP)」という環境ラベルを通じて確認できます。CFPとは、製品やサービスのライフサイクルにおける温室効果ガスの排出量を算定・可視化する手法で、企業が自主的に表示するケースが増えています。
建築におけるサステナブルデザイン
建築の分野においてもサステナブルデザインが取り入れられており、次のような要素を持つ建築物は「サステナブル建築」と呼ばれています。
●リサイクル建材の使用
リサイクル建材とは、建設の過程で発生した廃棄物などを原材料として製造された資材です。解体時の資材の分別・再資源化を義務づけた「建設リサイクル法」などの影響もあり、建設業界全体で現在、活用が進められています。
●エネルギーの最適化や長寿命化
設計段階では、エネルギーの最適化や長寿命化を目指すことが重要視されています。エネルギーの最適化とは、省エネルギー・創エネルギー・畜エネルギーの活用を指します。
例えば、省エネルギーでは冷暖房の使用量を抑える断熱材の使用、創エネルギーでは太陽光発電などの技術を用いる、畜エネルギーでは蓄電池の導入などがあります。
●地域への配慮
地域との調和を図ることも、建築におけるサステナブルデザインです。例えば、建築には「ヴァナキュラーデザイン」という考え方があります。地域の伝統や風土を重んじた設計、地域で調達できる材料の活用により、環境だけでなく地域にも配慮した現代建築を目指します。
サステナブルな建築には、「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)」や「LEED」といった認証制度があります。CASBEEは環境への配慮に加えて、室内の快適性や景観への配慮などを総合的に評価するシステムで、国内でも認証が進んでいます。
一方、LEEDはアメリカで開発された国際的な環境建築認証制度で、設計から施工、運用に至るまで、建物の持続可能性を多角的に評価しています。
【事例紹介】身近にあるサステナブルデザインの実例
ここからは、製品と建築におけるサステナブルデザインについて、それぞれ具体例を紹介します。
製品の具体例
●食品
例えば、ハムやベーコンなどの食品には、カーボンフットプリント(CFP)の環境ラベルが表示されていることがあります。また、植物由来のバイオマス素材が使われているお菓子のパッケージなども増えつつあります。
●日用品
今では当たり前になったプラスチック使用量を削減した詰め替え用の洗剤ボトルや、最近ではバイオマスプラスチックを使った容器なども登場。また、ラベルレスの製品も通販では一般化しつつあります。
実際にLOHACOやASKULでは、リサイクル素材を活用した日用品や事務用品、サステナブルなパッケージの製品などを取り扱っています。
「Matakul」の商品一覧
「対馬海洋プラスチック」の商品一覧
「ラベルレス」の商品一覧
建築の具体例
●新国立競技場「杜のスタジアム」
サステナブルデザインが取り入れられた建築例として、新国立競技場「杜のスタジアム」があります。杜のスタジアムでは、震災被災県を含む全国47都道府県の国産木材を活用。
外観や屋根などに木材を積極的に使い、緑豊かな周囲の環境に調和するデザインとなっています。また、使用木材は森林認証を取得しており、森林の持続可能性にも配慮された建築なのです。
●みなとみらいセンタービル
「みなとみらいセンタービル」もサステナブル建築の一例です。自然光を取り入れる装置による照明電力の削減や施設内・屋上の緑化、長寿命化対策など、さまざまなサステナブルデザインの要素を取り入れており、前述した「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)横浜」のSランクを取得しています。
身近なサステナブルデザインを見つけてみよう
消費者一人ひとりがサステナブルデザインを取り入れた製品を選んだり、建築に関心を持つ
ことで、ますますニーズが高まりムーブメントが広がっていくはずです。
日常のあらゆる場面でサステナブルデザインを選ぶ意識を持つことが、持続可能な社会の実現を後押しする力となります。身の回りの製品や建物をサステナブルデザインの視点から、ぜひ見つめ直してみてください。