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フードロス(食品ロス)とは?
フードロスとは、まだ食べられるのに廃棄される食品のことを指します。食品を廃棄すると、倫理的な問題だけでなく、食品を作るのにかかった資源や肥料、パッケージなどのあらゆるものがムダになってしまうなど、環境負荷も問題となります。
2023年に日本において発生したフードロスは、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料支援量を上回っている、という調査結果もあります(※1)。
世界の課題解決に向けて具体的な目標を示した「SDGs(持続可能な開発目標)」でも、目標12.3として「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。」(※2)というターゲットが定められています。
フードロスの問題を解決していくことは、未来の地球環境を守り、持続可能な世界を作り上げていく上でも重要なのです。
※1 参考:消費者庁「食品ロスについて知る・学ぶ」
※2 引用:国連グローバル・コンパクト(UN Global Compact)「目標12 持続可能な生産消費形態を確保する」
フードロスの現状は?
実際に、世界や日本ではどの程度のフードロスが発生しているのでしょうか。ここでは、フードロスの現状をご紹介します。
世界における現状
2024年に公表された国連環境計画の調査報告書では、世界全体で10億5,000万トンの食糧が廃棄されているという結果が明らかになっています。これは、世界で生産されている食料の約5分の1に当たる量です。
同報告書では、7億8,300万人が飢餓の影響を受けており、地球上の人類の3分の1が食料不安に直面している現実にも触れられています。多くの食料が廃棄されている一方で、飢餓に苦しむ人々も多く存在するのです。
※参考:国連環境計画(UNEP)「Food Waste Index Report 2024」
日本における現状
日本においては、消費者庁が年次でフードロスの推計値を公表しています。2023年の調査では、年間のフードロスは464万トンに上ると推計されています。
日本におけるフードロスは年々減少傾向にはあり、2000年の980万トンから約56%の削減に成功していますが、まだまだ多くの食品が廃棄されている現状があるのです。
※参考:消費者庁「2023(令和5)年度食品ロス量推計値の公表について」
フードロスが引き起こす問題は?
フードロスは、人道的・倫理的な問題だけでなく、廃棄物の処理に関する問題も引き起こします。
食糧不足問題
貧困により栄養不足に陥っている人が7億人以上いる中で、大量のフードロスを発生させている状況には、何より人道的・倫理的な問題があります。
国連環境計画(UNEP)の調査報告書では、全てのフードロス分の食料を飢餓に苦しむ人に届けられれば、1人当たり毎日1.3食分の食事になると考えられています(※)。実際にはフードロス分の再分配は難しくても、企業や個人が少しでもフードロスを減らす努力を続けていけば、現状を変えられるかもしれません。
このように、フードロスは多くの人々の命に関連する重要な問題といえるでしょう。
※参考:国際連合広報センター「7億8,300万人が飢餓に苦しむ中、食料全体の5分の1が廃棄処分に(UN News 記事・日本語訳)」
ゴミ問題
廃棄された食品を処分するためのコストや環境負荷も問題となっています。廃棄された食品を処分する際に発生した温室効果ガスは、世界全体の排出量の約1割を占めているという推計もあり、環境に与える影響は甚大です。
また、廃棄されたゴミを処分するために、各自治体では多額のコストを負担しています。加えて、焼却後の灰の埋め立てによる環境負荷も発生しています。
フードロスが発生する原因は?
フードロスは、大きく事業で発生するものと家庭で発生するものに分かれます。事業においては、製造したものの買い手が付かずに廃棄されてしまった食品や、レストランなどにおける食べ残しがフードロスとなります。
家庭においては、食品の食べ残しや購入し過ぎてしまった食品の期限切れによる廃棄、皮のむき過ぎといった可食部を過剰に除去してしまうことなどで発生するのです。
日本では、事業で発生するフードロスと同程度のフードロスが家庭で発生しており、家庭でのフードロスの対策も求められています。
フードロス削減に向けた企業の取り組み例
フードロスの削減に向けて、企業ではさまざまな取り組みを進めています。ここでは、一部の企業の取り組み例をご紹介します。
デニーズ他:「mottECO」による料理の持ち帰りを推進
セブン&アイ・フードシステムズが展開するレストランチェーンのデニーズをはじめ、連携する21団体では、顧客が食べ切れなかった料理を持ち帰れる「mottECO(モッテコ)」という取り組みを行っています。
顧客にも持ち帰れるメリットがあり、フードロスの削減にも貢献している他、持ち帰り用の容器も環境に配慮したFSC®認証製品を利用している点も特徴です。
※参考:デニーズ「mottECO(モッテコ)」
キユーピー:製造サプライチェーン全体でのロスを削減
大手食品メーカーであるキユーピーでは、食品生産におけるサプライチェーンを通して発生するロスの最小化に取り組んでいます。
製造段階では、製造ラインの効率化や商品設計の工夫によってフードロスを最小化し、賞味期限を長期化するための研究開発も推進。
また、売れ残りで返品された商品は、賞味期限内の物をフードバンクへ寄贈するといった取り組みも行っています。
※参考:キユーピー「食品ロスの削減・有効活用」
アスクル:「アウトレット食品」でフードロス削減に貢献
アスクルでは、通常の商品流通ルートでは届けられず廃棄予定となる、パッケージ変更による在庫品、形や規格が微妙に異なる「訳あり食品」、製造過程でできる余剰品や微細なキズがある食品などを、アウトレット食品としてお得な価格で販売しています。
この取り組みでは、まだ安全で品質基準を満たした食品に対して新たな価値を与えて、ムダにせずお客様に届けることを重視。缶詰やスープ、カップ麺、レトルト、調味料など、さまざまな食品が対象となっています。
「食品・調味料・お取り寄せ(アウトレット)」の商品一覧(LOHACO)
フードロスを減らすために私たちができることは?
フードロスを減らすためには、企業だけでなく一人ひとりの取り組みも重要です。ここからは、個人ができる取り組みをご紹介します。
買い物時にできること
買い物の際には、食べ切れない量の食品を購入することは避け、できるだけ賞味期限が近い食品から購入することが大切です。具体的には、以下の通りです。
- 買い出しをする前に冷蔵庫をチェックし、必要な分だけ購入する。特に、お得なまとめ買いによって必要以上に食品を購入しないように注意する。
- すぐに食べるものであれば、「てまえどり」を意識し、賞味期限が近いものを積極的に購入する。
自宅でできること
自宅では、食品をムダなく適切に利用することがポイントです。具体的には、以下の通りです。
- 食材に合わせた保管方法で適切に保管し、できるだけ長期間食べられるようにする。また、冷凍保存の活用も検討する。
- 冷蔵庫内にある古い食材から利用することで、痛んで食べられなくなってしまう食品を減らす。
- 食べ切れる分だけ調理し、調理後の廃棄を減らす。
外食時にできること
外食時にもフードロスをできるだけ発生させないように、以下を意識してみましょう。
- フードロス対策に積極的なお店を選び、間接的にフードロスの削減に貢献する。
- 食べ切れる分だけ注文し、食品を廃棄しない。また、残してしまいそうであれば、持ち帰れないかお店に相談する。
フードロスを減らして、誰一人取り残さない世界の実現に貢献しよう
世界中で貧困に苦しむ多くの人がいるなかで、世界全体の食糧生産の5分の1が廃棄されてしまっている現状は、非常に悲しいものではないでしょうか。
日々の何気ない食料廃棄や購入の選択が、回り回って一人の命を救うことにもつながるかもしれません。さっそく今日から生活の中で、少しずつでもフードロスを減らすための取り組みを意識してみてはいかがでしょうか。