ウォーターポジティブで水を守ろう!水資源の現状や企業の取り組み、個人のアクションも紹介

近年、世界中で水の需要量が増加していることから、水の持続的な利用に懸念が生じています。このため、私たち一人ひとりにも水を守る行動が求められています。

そんな風潮のなかで注目を集めているのが「ウォーターポジティブ」です。本記事では、水資源を未来へつなぐためにウォーターポジティブを実践する意義や、企業の先進的な取り組みについてご紹介します。

ウォーターポジティブとは

ウォーターポジティブ

ウォーターポジティブとは、主に企業が日常で使用する水の量よりも多くの水を自然環境や地域社会に還元することを目指す取り組みを指します。

私たちが使う水の多くは、生活や産業活動の過程で消費され、元の自然環境に戻ることはありません。そのため、使った以上の水を環境へ補給することが、持続可能な水の利用を実現するために必要なのです。

ウォーターポジティブが注目されている背景

ウォーターポジティブが注目される背景には、世界各地で水が枯渇しつつある現状や、気候変動による水不足の深刻化が関係しています。

水が枯渇しつつある背景の一つは、世界人口の増加です。国連の予想によれば、世界の人口は2080年ごろに約103億人まで増加すると見込まれており(※)、それとともに水の使用量も増えていくと予想されています。

また、気候変動による干ばつの増加も課題です。特に中緯度・亜熱帯の乾燥地帯は、降水量が減少すると予想されているため、水の利用が困難になるといわれています。こうした背景から、水を大切に利用するウォーターポジティブの考え方が注目されているのです。

※参考:国際連合広報センター「世界の人口は今世紀中にピークを迎える、と国連が予測」

不足する水の現状

不足する水の現状は、非常に厳しいものです。地球上の水のうち、海水などを除いて人間が利用できる水は、およそ0.01%に過ぎません。この限られた水をいかに持続的に利用しながら次世代へと残していくかが、私たちの課題です。

さらに、世界ではいまだに多くの人が安全な飲料水を手に入れられない状況が続いています。安全な水の確保も大きな課題となっています。限られた水を守っていくためにも、ウォーターポジティブな発想に基づく行動が求められているのです。

ウォーターポジティブとサステナブルの関係性

限りある水を守りながら循環型の社会を築くという点で、ウォーターポジティブはサステナブルな未来の実現に不可欠な考え方だといえます。

SDGsの達成目標にも「安全な水とトイレを世界中に」と掲げられています。人が生きる上で必須である水を安全に利用できるように、ウォーターポジティブの考え方を通してサステナブルな世界を実現していくことが重要です。

▼関連記事はこちら
サステナブルとは?意味やSDGsとの違い、日常でできる取り組みも紹介

ウォーターポジティブのアプローチ方法は?

ウォーターポジティブ

ウォーターポジティブには大きく、水の供給量を増やす、水の消費量を減らすという2つのアプローチがあります。

1.水の供給量を増やす

水の供給量を増やすためには、森林を保全して水を保持する力を高める、工場から排水する水を浄化する、河川の水質を安全に利用できるように改善するといったアプローチが有効です。

<水の供給量を増やすための取り組み例>

  • 森林の整備・保全
  • 草原や湿地の保全
  • 雨水貯留浸透施設の整備
  • 工場の排水浄化
  • 河川の水質改善

2.水の消費量を減らす

水の消費量を減らすための取り組みとして、工場内での水の再生と利用や雨水の利用などの他に、個人での節水トイレ・節水家電の活用なども効果があります。

<水の消費量を減らすための取り組み例>

  • 工場内での再生水の利用
  • 雨水の収集と利用
  • 製造工程の見直し
  • 節水トイレや節水家電の活用
  • 定期的な水使用量の確認

ウォーターポジティブのための企業の取り組み例

ウォーターポジティブ

ウォーターポジティブの考え方に基づき、取り組みを進める企業も増えつつあります。ここでは、サントリーとアスクルの取り組みを紹介します。

サントリー

大手飲料メーカーであるサントリーは、製造拠点で消費した水以上の水を自然に還元することを目標に、工場での水使用の最適化を行っています。また、水をはぐくむための森林保全やこども向けの次世代環境教育である水育(みずいく)などの活動を国内外で展開。

さらに、同社では主力ブランドである「サントリー天然水」を通した啓発活動も進めており、工場の見学ツアーや商品ラベルの工夫、CMの展開などを通してウォーターポジティブの発信を進めています。

※参考:サントリー「ウォーター・ポジティブ実現に向けたサントリー食品インターナショナル(株)水のサステナビリティ活動方針」

アスクル

アスクルでは、SDGsの達成目標6「安全な水とトイレを世界中に」を実現するべく、「空気や水の環境を考えるプロジェクト」として日本だけでなくベトナムやカンボジアなど世界の水の安全利用に関する取り組みを進めています。

日本においては、嬬恋村で取水した地下水をミネラルウォーターとして製造・販売している背景から、嬬恋村の森林整備活動を通して水の保全活動も開始。2024年には、ミズナラ2,250本、イタヤカエデ250本を植樹しました。今後も、少しずつ活動地域を拡大していく予定です。

※参考:アスクル「嬬恋村×嬬恋銘水×アスクル ~森と水を育む活動~」
エシラボ「水が育つ場所を守る 循環の物語」

私たちにできるウォーターポジティブに関連したアクションは?

ウォーターポジティブ

ウォーターポジティブは主に企業活動が主体となる考え方ですが、個人レベルでも水を守るためにできることはあります。水の供給量を増やす、水の消費量を減らすという2つの観点で取り組んでみましょう。

水の供給量を増やすためにできること

雨水の利用や家庭菜園の実施、水を守る活動への寄付といった活動で、水の供給量を増やすことに貢献できます。

<水の供給量を増やすための取り組み例>

  • 雨水をためて、庭やベランダの水やりに使う。
  • 湿地や水源を守る活動に参加したり、寄付したりする。
  • 水を自然に返す取り組みをしている商品やサービスを選ぶ。

水の消費量を減らすためにできること

節水は、個人がウォーターポジティブへ貢献できる代表的な取り組みです。地球環境を意識して、水をムダにすることなく利用しましょう。

また、牛肉や豚肉などは、牛や豚の飼育に大量の水が利用されていることが知られています。食べ物の選び方や、食べ物をムダにしないことも、実は水の消費量を減らすことに貢献できるのです。

<水の消費量を減らすための取り組み例>

  • 節水型のシャワーやトイレを使う。
  • 洗濯や食器洗いはまとめて効率よく行う。
  • 歯磨きや食器洗いのときに水を流しっぱなしにしない。
  • 牛肉や豚肉ではなく、大豆などでできた代替肉を食べる。
  • 食べ物をムダにせず、水の間接的な浪費を防ぐ。

ウォーターポジティブに関するQAまとめ

Q1:ウォーターポジティブとは何ですか?
A:ウォーターポジティブとは、自分が使用する水の量よりも多くの水を自然や社会に還元し、全体として水資源のプラスに貢献する考え方や取り組みを指します。つまり、積極的に水を守り、回復させる活動を推進することです。

Q2:ウォーターポジティブには、どのようなアプローチがありますか?
A:ウォーターポジティブを実現するためのアプローチは、水源の保全活動といった「供給量を増やす」取り組みと、節水機器の導入や水の再利用といった「消費量を減らす」取り組みがあります。

Q3:私たち個人ができる、ウォーターポジティブの取り組みはありますか?
A:雨水の利用や家庭菜園の取り組み、水を守る活動への寄付の他に、節水型のシャワーやトイレの使用、水の流しっぱなしをやめるといった日常の工夫も有効です。また、牛肉や豚肉の消費を減らして大豆などの代替肉を選ぶ、食べ物をムダにしないことも水の保全につながります。

限りある水を守るために、ウォーターポジティブを意識しよう

使用する水の量よりも多くの水を自然環境や地域社会に還元することを目指すウォーターポジティブは、企業の取り組みとしてはもちろん、私たちの日々の生活においても実践できるものです。

節水だけでなく、庭の植栽や雨水の利用などもまた、水を有効活用するための取り組みといえるでしょう。その他にも、ウォーターポジティブに取り組む企業の商品を選ぶこともまた、間接的に水を守る取り組みに貢献できます。

限りある水を守るために、日常生活でもウォーターポジティブを意識してみてはいかがでしょうか。

おすすめ記事
2025.08.01
この記事の目次水の日・水の週間とは?水の日・水の週間が制定された理由世界水の日とは?水資源の現状と課題日本における水資源の利用状況日本は水資源の輸入国?「バーチャルウォーター」とは世界の水資源の現状水資源を守る企業の取り […]
#SDGs
#今日は何の日?
ご不明点やご質問など、フォームよりお気軽にお問い合わせください。
「エシラボ」運営事務局より、 通常1週間以内に回答申し上げます。
お問い合わせ