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「暑すぎる夏を終わらせる日」って?

「この暑さに、慣れてはいけない」。記者会見の冒頭では、この言葉が繰り返し語られ、会場全体の空気を引き締めました。
「暑すぎる夏を終わらせる日」とは、一般社団法人日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)が主導して制定した記念日です。
JCLPは、脱炭素社会の実現には産業界が健全な危機感を持ち、積極的な行動をすべきであるという認識のもと、2009年に発足した企業団体です。
その代表理事であり株式会社リコー取締役会長の山下良則さんは、「地球は先祖から譲り受けたものではありません。未来の子どもたちから借りたものなのです。」という言葉を引用して、「地球が未来から借りているものならば、きれいにして返さなくてはいけないと私は思っています。そのために尽力したい」と想いを語りました。
その上で、「気候変動は一企業の努力では解決できない課題です。だからこそ、企業の枠を超え、仲間を増やしながら一緒に取り組んでいきたい」と挨拶。

この記念日は、年々増す暑さとその原因である地球温暖化を当たり前にせず、未来の世代のために気候危機を止めるためのアクションを起こそう、という想いをみんなで共有するための日なのです。
記念日が8月8日に制定されたのは、日本で最も暑さが厳しい時期にあたるのは8月初旬であることが理由です。また、「8」を横にすると∞(無限大)を表すことから、気温上昇の無限ループを断ち切ろうという決意が込められています。
2024年は最も暑い年の1つに。データが語る異常な暑さ

記者会見では、極端気象アトリビューションセンターの渡部雅浩教授(東京大学大気海洋研究所)が登壇して、科学的な視点から猛暑の実態を語りました。
「異常気象の頻度は、観測データからも確実に増えています。2024年の世界の平均気温は、産業革命前と比べて約1.5℃高く、観測史上最も暑い年の1つになりました」。

※出典:JCLP「暑すぎる夏を終わらせる日」制定記念記者会見の投影資料
特に、日本でも真夏日(最高気温30℃以上)の日数はこの50年でおよそ2倍に増え、昇温スピードは世界平均の2倍弱で進んでいるそうです。
さらに渡部教授は、「猛暑は単なる“暑い夏”ではなく、気候変動そのものなのです。異常気象は人ごとではなく、日常生活に関わります。国内の最高気温を今年もまた更新しており、記録的な豪雨や大雨災害、大規模な森林火災なども発生しています。異常気象は災害や作物不足、動植物の生態にも影響しています」と語りました。
渡部教授のデータを交えた発言は、私たちが感じている暑さが決して気のせいではなく、まぎれもない地球規模の変化であることを強く印象づけました。
単なる社会貢献活動ではない、企業の本気の取り組み

記者会見には他にも、LINEヤフー株式会社をはじめとしたJCLP会員企業が参加しました。
LINEヤフーは、サステナビリティ領域の事業として、自社のマーケティングプラットフォームを活用して、サステナビリティに取り組む企業と消費者をつなぐ「サストモ」を運営。サストモの「公式オープンチャット」を開設して、気候変動の現在地について、生活者や企業が対話できる場をつくりました。

また、戸田建設株式会社からは、環境負荷を低減した建設状況や建設現場での暑さ対策などの報告がありました。株式会社リコーは、再生可能エネルギーの導入を拡大し、オフィスでの排出削減を具体的に進めています。
気象変動や猛暑は、社会や経済、家庭など、広範囲かつ多岐にわたって影響を及ぼしています。だからこそ、多くの企業が協力して気候変動や脱炭素に取り組むことが必要なのです。
登壇した各社からは、単なる社会貢献活動ではなく、経営課題として真剣に取り組んでいる姿勢が伝わり、会場にはその「本気度」がにじんでいました。
ご当地キャラクターや気象キャスターも取り組みに参加

さらに記者会見では、研究機関や企業だけでなく、こうしたムーブメントに賛同した非営利法人などの団体も登壇しました。
一般社団法人日本ご当地キャラクター協会の荒川深冊代表理事は「暑すぎる影響で、日本中のご当地キャラがお客様と触れ合える時間が減っています」と話します。そこで、ご当地キャラも自分ごととしてSNSに猛暑についての投稿をするなど、暑すぎる夏を止めるための想いに共感して一緒に活動をしていくそうです。
「キャラクターは、子どもから大人まで幅広い層に届きます。気候変動という言葉が難しくても、キャラクターを通じてなら身近に感じてもらうことができる。ご当地キャラも私たちも安心して過ごせる未来を一緒に作っていきたいと思います」と語りました。

また、NPO法人 気象キャスターネットワークの石榑亜紀子さんは、「この夏の数日だけでも、歴代最高気温が更新されています。地球温暖化が素通りできない状況になっていることは、明確に現れています。
気候変動は、食品の高騰、運動量の制限、生態系の変化など、人々の生活に直結します。猛暑を『今日も暑いですね』で終わらせず、その背景にある気候変動をいろんな言葉で伝えていきたいです」と話しました。

さらに、ウインタースポーツから気候変動への取り組みをしている一般社団法人 Protect Our Winters Japanの高田翔太朗事務局長は、気候変動で降雪が激減していることで、世界中で雪が足りなくなり、多くのスキー場が倒産・閉鎖している現状を説明。そこで、団体として政府への政策提言や世論への気候変動への訴えかけなどをしているそうです。
記念日の制定を通して、様々な団体や企業が手を組み、一緒に地球温暖化に歯止めをかけていこうという熱が高まっていることが伝わる記者会見でした。
今回の記者会見には登壇していませんが、文具や事務・日用品、医療品などを扱うアスクルも、この記念日や取り組みに賛同しています。
8月8日をきっかけに、私たちの未来について考えてみよう
「暑すぎる夏を終わらせる日」は、制定された瞬間がゴールではなくスタートです。JCLPは今後、毎年8月8日に啓発イベントを開催して、協力団体や企業と連携して生活者に伝わる情報やコンテンツを発信・展開していく方針です。
猛暑は、もはや誰にとっても無関係ではありません。熱中症のリスクや働き方の変化、食生活やエネルギー需要への影響など、すでに日常生活に直結しています。この記念日は、そうした問題を見過ごさず、社会全体で考えて動いていくためのきっかけです。
「今年の夏も暑いね」と流してしまうのか、それとも未来を変えるためのきっかけにできるのか。8月8日は、国や社会や私たちに対して、この現実に目を向けて行動を始められるかの問いを、投げかけています。

