サステナブル調達とは?求められる背景と企業の事例を解説

最近は、企業のCMや広告、ビジネスの現場で「サステナブル」という言葉を耳にする機会が増えました。企業は良いものを安く作って消費者に提供するだけでなく、環境や社会に配慮した「サステナブル調達」の実践が求められているのです。

本記事では、なぜサステナブル調達が重要視されているのか、詳しく解説します。

サステナブル調達とは?

サステナブル調達

サステナブル調達とは、環境、社会、経済の持続可能性を考慮した上で、自社製品の製造やサービスの提供に必要な原材料や部品、物流、ITサービス、広告、インフラなどを外部から調達することを指します。特にグローバル企業では、サプライチェーン(バリューチェーン)が長大化しており、その上流が海外、場合によっては紛争地域にまで及ぶケースも少なくありません。

これまで、多くの企業における調達活動では、品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)の3つの要素、いわゆる「QCD」が優先されてきました。

ですが、気候変動や労働問題が注目されてきた中で、企業は良いものを・安く・早く調達するだけではなく、環境に配慮しており、かつ人権を尊重する企業から必要なものを調達し、サプライチェーン全体で社会的な責任を果たすことが求められています。

そのため、調達先が環境を考慮しているか、児童労働や強制労働などの人権侵害を行っていないか、法令を遵守しているかといった点を確認した上で、適切な対応を行う組織から調達を行う企業が増えてきているのです。

サステナブル調達が広まったきっかけ

この考え方が日本で広く知られるようになったきっかけの一つに、公共調達や国際的なイベントにおける「調達コード」の進化があります。

例えば、東京オリンピック・パラリンピックや大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)の運営では、開催に必要な物資やサービスの調達基準・規範として「持続可能性に配慮した調達コード」が定められました。これによって、大手企業を中心にサステナブル調達への対応が急速に進み、今ではその動きが中堅・中小企業にも広がりを見せています。

サステナブル調達とCSR調達・グリーン調達の違い

サステナブル調達と似た言葉に「CSR調達」や「グリーン調達」があります。CSR調達の「CSR」とは、「企業の社会的責任」を意味します。CSR調達は、法令遵守や人権尊重、労働環境の適正化、公正な取引など、倫理的な側面に重点を置いた調達活動のことです。

グリーン調達は、名前の通り環境面への配慮に特化した調達手法です。省資源、省エネルギー、リサイクル性の高い素材の選定、有害物質の不使用など、環境負荷を低減できる物品を優先的に購入する取り組みを指します。

サステナブル調達は、こうしたCSR調達やグリーン調達で重視されてきた考え方を踏まえつつ、環境・社会・経済のバランスを意識して調達活動を捉える言葉の一つです。近年は、「サステナブル調達」という言葉が使われる場面が増えていますが、業界や専門家の間では、より社会的な責務を明確に示す表現として「CSR調達」を重視すべきだという考え方もあります。

そのため、これらの言葉は企業の考え方や目的、文脈に応じて使い分けられていると理解するとよいでしょう。

なぜサステナブル調達が求められているの?

サステナブル調達

ではなぜ今、世界中でサステナブル調達が必要な取り組みとなっているのでしょうか。その背景には、企業を取り巻く社会環境の変化や未来に向けた危機感があります。

企業が社会的な責任を果たすため

これまでは、何か不祥事や環境汚染などが発生した場合、その責任は直接問題を起こした企業のみに問われることが一般的でした。ですが、現在ではその責任範囲がサプライチェーン全体へと拡大しています。

例えば、製品を製造販売しているメーカーの工場で問題がなくても、その原材料を採掘している海外の鉱山で児童労働が行われていたり、部品工場で深刻な水質汚染が起きていたりすれば、発注元であるメーカーも「問題を黙認した」として追及される可能性があります。

原材料の調達から製造、流通、そして製品の廃棄に至るまで、全てのプロセスにおいて環境負荷や人権侵害がないように配慮することは、企業が存続するための社会的責任となっているのです。

企業や社会が持続的に成長するため

地球環境の悪化は、個人の生活だけでなく、企業の持続的な生産活動にも大きな影響を与えます。気候変動による異常気象で農作物が採れなくなったり、資源の枯渇によって原材料の価格が高騰したりすれば、安定した商品供給は不可能です。

そのため、サステナブル調達は企業にとって防衛策でもあります。短期的なコスト削減や利益だけを追求すれば、いずれ資源や労働力が枯渇し、事業の継続が困難になるでしょう。長期的な視点で社会全体の健全なサイクルを作って回すことで、企業は持続的にビジネスを続けられるのです。

サステナブル調達に取り組む企業の事例

サステナブル調達

ここからは、実際にサステナブル調達を推進している企業の具体的な事例をご紹介します。

ソフトバンク

通信大手であるソフトバンクでは、「環境への配慮」「児童労働の禁止」「公正な競争」などの14項目からなる「サプライヤー倫理行動規範」を制定し、サプライヤーに対して遵守を求めています。

遵守状況を実際に確認するため、同社では2020年より年次で「サステナビリティ調達調査」を開始しました。この調査では、自社での評価に加えて第三者による評価も行い、サプライチェーンにおける潜在的なサステナビリティリスクを特定して、改善を進めています。

※参考:ソフトバンク 「サステナビリティ調達調査」

富士フイルム

富士フイルムグループは、「サステナブル調達推進プログラム」のもと、「富士フイルムグループのCSRの考え方の周知」「調達先評価」「調達先への改善要請と支援」「調達先による改善活動」という4つのステップで活動を行っています。

同社では、人権・労働・環境・企業倫理などの項目について、定期的にリスク診断やサプライヤーによる自己評価を実施。もし基準を満たさなければ、サプライヤーへ専門家を派遣し、改善のアドバイスを行うところまでサポートするなど徹底しています。

※参考:富士フイルムホールディングス 「サステナブル調達活動」

アスクル

アスクルでは、顧客が安心して商品・サービスを利用できるように「責任あるサプライチェーンの構築」を重要課題として位置づけています。

サプライヤーと共に持続可能な社会を実現するため、2021年には「アスクル サステナブル調達方針」を定めました。本方針に基づいて、商品採用時と取引開始時、そして定期的に遵守事項に関するアンケート調査や製造委託工場の現地確認を実施。サプライチェーン全体での方針の遵守状況を確認しています。

※参考:アスクル「サステナブル調達方針」

サステナブル調達に関するQAまとめ

Q1. サステナブル調達とは何ですか?
A. 製品やサービスを調達する際に、価格や品質、納期だけでなく、環境保全、人権尊重、労働環境、公正な取引といったサステナビリティの観点も考慮して行う調達活動のことです。

Q2. なぜサステナブル調達に取り組む企業が増えているのですか?
A. 気候変動や人権問題などへの対応が企業の社会的責任として強く求められているためです。また、資源枯渇のリスクを回避しながら、企業自身が長期的に事業を継続するためにも、企業の取り組みの必要性が増しています。

Q3. サステナブル調達に取り組む企業の具体例は?
A. ソフトバンクや富士フイルム、アスクルなどがあります。各社とも独自の調達方針や行動規範を策定し、サプライヤーと協力しながらサステナブル調達を行っています。

サステナブル調達を実施している企業を調べてみよう

サステナブル調達に取り組む企業の商品やサービスは、環境や社会に配慮されており、誰かの犠牲や搾取を可能な限り避けて提供されています。そうした背景を持つ商品やサービスを意識的に選ぶことで、個人もサステナブル調達に取り組む企業を支援することにつながります。

「安いから」「便利だから」という理由だけでなく、「環境や社会に配慮しているか」という視点もぜひプラスしてみてください。そのためにもまずは、企業の取り組みを知ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。

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