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「旅の日」とは?

旅の日は、旅の文化の向上や自然環境の保護、そして観光を通じた地域活性化などを目的として活動を続けている「日本旅のペンクラブ」によって、1988年に制定されました。
毎年5月16日を旅の日として、日本人の旅行観や旅行関連業界が今後どのようにあるべきかなど、旅について考えて語り合う機会とするために、さまざまな活動が行われています。
その一環として、毎年旅の日の前後には、日本旅のペンクラブによる「旅の日」川柳の表彰が行われます。また、長年にわたって旅の文化向上や地域貢献に尽力した人物・団体への表彰も行われており、旅の文化を支える人々にスポットライトが当たる日でもあります。
なぜ5月16日が旅の日なの?
5月16日は、松尾芭蕉が「おくのほそ道」を執筆するきっかけとなった、長い旅へと出発した日を現在の太陽暦のカレンダーに換算した日付です。
人生そのものを旅として捉えていた松尾芭蕉は、「たとえ道中で行き倒れたとしても、古くからの名所を巡り新しい世界へ飛び出したい」という純粋で強い気持ちで旅に出ました。旅の日が制定された目的は、こうした現代社会で忘れられがちな「旅の心」を大切にして、旅のあり方を見つめ直すことにあります。
目的地へ移動して観光するだけではなく、自身を見つめ直す機会となる旅の価値を、現代にも伝えていくための日として旅の日は生まれたのです。
旅の日をきっかけに意識したい「エシカルな旅」

旅の日をきっかけに旅のあり方を見つめ直す際には、「エシカルな旅」という視点もぜひ意識してみましょう。というのも、近年は旅行や観光のシーンにおいて、「オーバーツーリズム」と「サステナブルツーリズム」が注目されています。
観光地で起きている「オーバーツーリズム」問題
テレビやインターネットの記事などで、「オーバーツーリズム」という言葉を見聞きしたことはありませんか? オーバーツーリズムとは、人気の観光地に地域の受け入れ可能なキャパシティを超えるほどの観光客が押し寄せることで、地域住民の日常生活やその土地の自然環境に悪影響を及ぼしてしまう状態を指します。
例えば、これまで静かだった住宅街での騒音トラブルや一部の観光客によるごみのポイ捨てがあります。他にも、地元の人々が通勤や通学で利用する公共交通機関が、観光客で満員になってしまうといった事態は、地域社会にとって切実な問題です。
また、長い年月をかけて守られてきた自然遺産や歴史的価値の高い建造物が、踏み荒らされたり破損したりするケースも少なくありません。私たちが自分本位な気持ちだけで旅をしてしまうと、意図せずともその土地の魅力や生活を壊してしまいかねないのです。
「サステナブルツーリズム」を意識して、観光を持続可能なものにしよう
こうしたオーバーツーリズムによる課題への解決策として注目されているのが「サステナブルツーリズム」です。これは、地域の美しい自然環境や古くから受け継がれてきた文化、伝統などを尊重して、それらを守りながら観光を楽しむという、新しい時代の旅の考え方を指します。
10年後、50年後、さらにその先の未来においても、その観光地が美しい姿のままあり続け、同時に地域の人々が豊かに、そして穏やかにくらし続けられるように配慮して行動することが、現代の旅人には求められているのです。
エシカルな旅を楽しむための3つのアクション

地域にやさしいエシカルな旅をするといっても、難しく考える必要はありません。私たちのちょっとした心がけで、誰でも簡単に実践できます。ここでは、エシカルな旅を楽しむための具体的なアクションを3つご紹介します。
環境や文化を守ろう
まず心がけたいのは、旅先の自然環境や文化に対して、敬意を払うことです。
例えば、山や森でのトレッキングに出かける際には、必ず決められたコースの範囲内を外れないように歩きましょう。むやみに道を外れると、自生する希少な植物を踏み荒らしてしまったり、野生生物の生態系を脅かしてしまったりする恐れがあります。
また、その地域の伝統行事やお祭りを見学する際には、ただの見世物として消費するのではなく、そもそも神聖な場であるという理解が必要です。立ち入り禁止の区域に入らない、写真撮影の可否を確認するなど、その場所特有のルールやマナーを理解して、遵守することが大切です。
加えて、地域への貢献という視点も持ってみましょう。その土地で生産された新鮮な食材を使った郷土料理を味わったり、伝統工芸品をお土産に購入したりするのも、地域の経済を応援することや文化の保護につながります。
地域の住民に配慮しよう
旅行者にとっては非日常の観光地であっても、地域住民にとっては日々のくらしを営む場所であることを忘れてはいけません。
観光客が急増すると、前述の通り、地元の人が公共交通機関を利用できなくなったり、ごみ収集が追いつかなくなったりと、住民の生活の質を下げてしまう原因となります。こうした事態を防ぐためにも、可能であれば混雑する時期や時間帯を避けて観光地に訪れる工夫をしてみましょう。
また、自分が出したごみは必ず持ち帰る、静かな住宅地や夜間にはむやみに騒がないなど、旅先でも一人の生活者として当たり前の配慮を持つことが大切です。
目的地や現地での移動手段を見直そう
目的地へ向かう移動手段にも、目を向けてみましょう。観光旅行で排出される温室効果ガスの大部分は、移動の過程で発生するものです。
距離や日程にもよりますが、可能であれば、環境負荷の大きい飛行機や一人乗りの自家用車よりも、一度に多くの人を運ぶことができる鉄道や路線バスといった公共交通機関を利用することをおすすめします。
新幹線やローカル列車での移動は、運転の疲れを気にせず、車窓からの美しい景色をゆっくりと楽しむことができ、移動する時間そのものを旅の魅力へと変えてくれる手段です。
現地に到着してからも、レンタカーを借りる代わりにレンタサイクルを利用したり、あえて徒歩で散策したりしてみてはいかがでしょうか。車では素早く通り過ぎてしまうような素敵な発見や出会いが、きっとあるはずです。
旅の日に関するQ&Aまとめ
Q. 旅の日はいつですか?
A. 「旅の日」は、毎年5月16日と定められています。1988年に旅の文化の向上などを目指す団体である「日本旅のペンクラブ」によって制定されました。
Q. なぜ5月16日が旅の日と定められたのですか?
A. 江戸時代を代表する俳人・松尾芭蕉が『おくのほそ道』の旅へ出発した日を、現在のカレンダーに換算した日付が5月16日であることに由来しています。
Q. 「エシカルな旅」とはどのようなものですか?
A. 地域の自然環境や固有の文化、歴史を尊重し、そこに暮らす人々の生活に配慮しながら楽しむ旅行スタイルのことです。「サステナブルツーリズム」の考え方に基づき、混雑を避ける、ごみを持ち帰る、公共交通機関を利用する、地産地消を心がけるなど、地球と地域にやさしい選択を自ら実践する旅を指します。
旅の日をきっかけに、未来につながるエシカルな旅へ出かけよう
毎年5月16日の旅の日は、私たちがふだん何気なく楽しんでいる旅行のあり方について、少しだけ立ち止まって考えるためのよい機会です。松尾芭蕉が自身を見つめ直すために旅へ出たように、私たちもまた、旅を通じて日常の疲れを癒やし、新しい価値観に触れて心を豊かにしています。
ですが、その素晴らしい体験は、旅先の美しい自然や受け入れてくれる地域の人々のくらしがあってこそ成り立つものです。オーバーツーリズムが社会問題化する今、消費するだけの観光から一歩踏み出し、環境や文化を守る意識を持つことが求められています。
次の休日は自分自身だけでなく、地域にもやさしいエシカルな旅を計画してみてはいかがでしょうか。


