この記事の目次
「世界環境デー」とは?
世界環境デーは、環境問題に対する関心と理解を深め、環境保全活動を促進することを目的として定められた国際的な記念日です。
1972年6月5日からストックホルムで開催された「国連人間環境会議」を記念した日で、日本とセネガルの提案を受けて、1973年に国連総会で制定されました。
日本では、6月5日が環境基本法で「環境の日」と定められています。また、実は1991年から6月を「環境月間」として、環境保全の関心と理解を深めるためのさまざまな行事が全国で実施されているのです。
世界環境デーは制定以来、国連環境計画(UNEP)による主導で、毎年異なるテーマに焦点を当てた取り組みが行われています。例えば、2024年のテーマは土地の再生、砂漠化、干ばつへの耐性で、2023年はプラスチック汚染の解決、2022年は人間と自然の調和というテーマに焦点が当てられました。
2025年のテーマは「プラスチック汚染をなくそう」
毎年異なるテーマを掲げて会合などが開催される世界環境デーですが、2025年のテーマは「プラスチック汚染の根絶」。プラスチック汚染の根絶は、気候変動対策や環境保全など、SDGsの達成にとって重要な取り組みです。
世界環境デーを主催する国は毎年変わっていき、今年の主催国である韓国では、プラスチック汚染に関する国際的なルールを策定するための会合が2024年11月〜12月に開催されました。次回は、2025年8月にスイスのジュネーヴで会合が開催される予定です。
世界環境デーでプラスチック汚染の根絶をテーマに掲げることで、世界中の人々がさまざまな国際的な取り組みにも関心を持つよいきっかけになっています。
プラスチック汚染とは?
コストが低く利便性の高いプラスチックは、さまざまな製品に使用され、私たちの生活に深く浸透しています。ですが、一方で「プラスチック汚染」という問題を引き起こす存在でもあるのです。
プラスチック汚染とは、適切に処理されなかったプラスチックが、野生生物や土壌、水質環境、さらには私たちの体にまで悪影響を及ぼすことを指しています。ここでは、プラスチック汚染の主な課題とその原因についてみていきましょう。
プラスチック汚染の課題
プラスチック汚染が抱える主な課題として、環境汚染と生態系の破壊があります。特に、「マイクロプラスチック」による影響は深刻です。石油由来のプラスチックは自然に分解されないため、紫外線や海流などの影響でマイクロプラスチックと呼ばれる細かい破片となり、自然環境に蓄積されていきます。表面に汚染物質が吸着しやすくなる点が特徴です。
この微細化して汚染物質を吸着したプラスチックは、海洋や大気、土壌を汚染します。そして、海洋生物や鳥がマイクロプラスチックをエサと間違えて飲み込む問題や、プラスチックゴミで窒息する問題が起きて、生態系の破壊につながるのです。
また、プラスチック汚染の影響を受けるのは、動物だけではありません。海洋汚染が漁業などの経済活動に損失をもたらしているだけでなく、人間も空気や水、食べ物を通してマイクロプラスチックを体内に取り込んでしまいます。プラスチック汚染は、私たち人間の健康にも影響を及ぼす恐れのある問題なのです。
プラスチック汚染の原因
こうしたプラスチック汚染が起きてしまう原因は、主に2つあります。1つ目は、「不適切なゴミの処理」です。ポイ捨てや不法投棄されたプラスチックゴミは、自然環境に流出しやすく、悪影響を及ぼす原因となります。
2つ目は「過剰なプラスチックの使用」です。企業による製品の過剰包装や利便性を優先したプラスチック素材への依存によって、プラスチック汚染の原因となる廃プラスチックが生まれてしまいます。また、大量生産・大量消費・大量廃棄の傾向も廃プラスチックの排出を加速させる要因です。
▼参考
政府広報オンライン「海洋プラスチック問題は海洋汚染の要因にも きれいな海と生態系を守る!「プラスチック・スマート」キャンペーン」
プラスチック汚染をなくすための、世界と日本の取り組みは?
プラスチック汚染の課題解決を目指し、国際社会と日本では、さまざまな対策を打っています。ここでは、世界や日本で実施されている取り組みの一部をそれぞれ紹介します。
世界の取り組み
EUでは、プラスチックの循環経済への移行を目的とした「特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令」が2019年7月に発効されました。カトラリーや発泡スチロール製の容器など、特定の使い捨てプラスチック製品の消費削減や市場流通の禁止などを定める内容です。
また、中国でも使い捨てプラスチックの削減に向けて規制を実施しています。非分解性プラスチック袋や使い捨てプラスチック食器の使用禁止、ホテルでの使い捨てプラスチック用品の提供禁止など、段階的に規制して、代わりとなる非プラスチック製品の使用を促しています。
日本の取り組み
日本では、2019年5月に「プラスチック資源循環戦略」が策定されました。Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)からなる「3R」に、再生素材や再生可能資源に切り替えるという意味を持つ「Renewable(リニューアブル)」を加えた「3R+Renewable」が基本原則として掲げられています。
2020年7月からは、持ち手のついたプラスチック製のレジ袋が有料化されました。民間企業では、ストローなどに代表されるプラスチック製品の廃止や、バイオマスプラスチックやリサイクルプラスチックの導入の動きが日本でもみられています。
また、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が2022年4月に施行されました。この法律では、プラスチックの資源循環の取り組みを促進する措置が定められています。
プラスチック汚染をなくすために、私たち個人にできることは?
プラスチック汚染は、消費者である私たち個人の生活とも深く関わっている問題です。そこで、日常生活のなかで今日からできる取り組みをご紹介します。まずはできそうなことから、一つでも試してみましょう。
ゴミの分別とリサイクルを正しくする
プラスチック資源を循環させるためには、まずは廃プラスチックを正しく処理し、リサイクルにつなげることが大切です。地域のルールに従って、ゴミをしっかり分別するようにしましょう。
詳しいルールは自治体によって異なりますが、汚れているプラスチックゴミはリサイクルに適さないため、拭き取ったり、水ですすいだりしてからゴミに出すようにしましょう。
過剰包装の商品を買わない
必要以上にプラスチック包装が施された、過剰包装の商品は環境への負担になります。量り売りの商品や、ラベルレスなどの簡易包装の商品を選び、できるだけ過剰包装や個包装の商品を買わないようにするとプラスチックゴミの削減につながります。
プラスチック製のレジ袋、ストロー・カトラリーを断る
飲食店やコンビニ、スーパーマーケットなどでは、使い捨てのプラスチック製品を受け取らず、繰り返し使えるアイテムを持参するようにしましょう。
例えば、レジ袋やストロー、使い捨てカトラリーなどを断り、エコバッグやマイストロー、マイカトラリーを持ち歩くようにすると、不要なプラスチックゴミを減らせます。
また、タンブラーを持参するとドリンクが割引される制度が取り入れられているカフェチェーン店などもあります。環境にやさしいだけでなく、節約にもなる場合があるので、ぜひ習慣にしてみてください。
「エコバッグ」の商品一覧(LOHACO)
「繰り返し使えるストロー」の商品一覧(LOHACO)
リフィル(詰め替え)商品を選ぶ
シャンプーや洗剤などの日用品は、詰め替え用のリフィル商品が販売されていることが多くあります。中身を使い切るたびに容器ごと買い替えるのではなく、リフィル商品を購入して、容器を繰り返し使用するとよいでしょう。
寄付をする
プラスチックゴミの回収など、プラスチック汚染の解決に取り組む団体への寄付や、売り上げの一部が寄付される「寄付金つき商品」を選ぶことも、大切な支援の一つです。
例えばアスクルでは、日本で多く海洋プラゴミが集まる長崎県対馬市とSDGs連携協定書を締結し、売り上げの一部を海洋ゴミの回収や処理に役立てる寄付金つき商品を販売しています。
TSUSHIMA×ASKUL project「寄付金つき商品」
世界環境デーは、プラスチック汚染について考えてみよう
世界環境デーの2025年のテーマである「プラスチック汚染」は、生態系や健康を脅かす環境問題であり、私たちの生活にも密接に関わっているため、まずは理解を深めることが大切です。
国際的な条約交渉や各国の規制、政府や企業による取り組みが進んでいますが、私たち個人の行動も重要な役割を果たします。ゴミの分別やプラスチックゴミの削減、環境にやさしいお買い物など、世界環境デーを機に、今日からできるアクションを始めてみましょう。