新たな価値を提供すべく、約コップ一杯分のサイズの飲料水を開発
ーーまずは、谷口さんの今一番のイチオシアイテムである「LOHACO Water 210ml ラベルレス」についてお伺いします。そもそも、「LOHACO Water」というブランドが誕生した経緯から教えてください。
谷口:「LOHACO Water」は、もともと2016年に発売された2Lのペットボトルからスタートしました。BtoCサービスとしては後発のLOHACOで、「LOHACOと言えばこれ」というヘッド商品を何にするか考えて、ミネラルウォーターに決定したのです。
開発当時、ミネラルウォーターはLOHACOのお客様にとって、一番最初にカゴに入れる商品カテゴリでした。これは重い商品も玄関先まで届けられる、日用品ECであるLOHACOの特徴です。
ですが、飲料は通常品とは同梱ができず、別送するので、物流費が高くなってしまうという課題がありました。そこで、1つの配送用段ボールにまとめるために、2Lのボトルを3本セットで販売する形態にも挑戦したのですが、配送用段ボールの中で動いてしまうという問題がありました。
そうした課題を解決すべく試行錯誤していた時、2Lのペットボトルを5本一列に並べた外装箱にすると、配送用段ボールの底面にぴったりはまることに気がつきました。そこで、嬬恋銘水をアスクルグループに迎えて、5本一列の外装箱に入った「LOHACO Water 2L」を開発することになったのです。
ーーそこから、どういった流れでサイズ展開をしていったのでしょうか。
谷口:その後は、小型のペットボトル商品が市場に増えてきた流れを受けて、お客様が持ち運びしやすく、握りやすい商品として、410mlの「LOHACO Water」を発売しました。
そこからさらに小型の商品として誕生したのが、210mlの「LOHACO Water」です。それまで、「LOHACO Water」はLOHACOを利用される個人のお客様をメインターゲットとしてきたブランドでしたが、新しいマーケットを作りたいという思いもあり、BtoBの市場を意識して開発しました。
ーーオフィス利用だと、410mlは大きすぎるという声が多かったのでしょうか。
谷口:そうなんです。特に対面での顧客対応があるお客様から、「410mlだと、会議や商談中にお客様が飲みきれない」というお声が多くありました。飲み残しがあると、それを片付ける手間が発生しますし、そもそも貴重な水資源をムダ遣いしていることになります。その手間やムダ遣いの解消こそが、約コップ一杯分の分量である210mlの開発目的でした。
加えてBtoCの市場でも、みなさんがふだん持ち歩くバッグがかなり小型化してきていることに着目しました。210mlであれば、小さいバッグにも問題なく入るのではないか、という狙いもありました。
さまざまな仕掛けやこだわりが詰まった、外装箱とボトルにも注目
ーー アスクルでは、今までにないサイズの商品だと思います。その分、開発で苦労されたことはありましたか?
谷口:個人のお客様からすると、このサイズだと割高に見えるのではないか、という不安がありました。そこで、配送用段ボールの中に、20本入りの外装箱が最大4ケース入るようにしたんです。より多くの「LOHACO Water 210ml」を1回のご注文でお届けできるようになったことで、割高感が解消できた上で、物流コストの削減にもつながりました。
ーー「LOHACO Water 210ml」は、外装箱にもこだわっているそうですね。縦置き開封、天面開封、横置き開封と3パターンも選べることに驚きました。
谷口:外装箱をコンパクトに仕上げられたので、このサイズであれば、さまざまな使用シーンが考えられると想定しました。用途や場所によって使い分けられる開け方ができないかと、メーカーさんと試行錯誤したんです。
外装箱は、天面を一部開けた後に縦置きで開封すれば、横からペットボトルを抜き出せる仕様になっている
谷口:縦置き開封では、開けた後に裏側に折り返したフタ部分が戻らないように、ストッパーも作ったんですよ。
外装箱の一部を折って差し込めば、折り返したフタ部分が浮かない仕様になっている
ーー本当だ! 配慮が細かいですね。ここまで考えるのは大変だったのでは?
谷口:はい。正直、ここまで作り込むのは大変でした(笑)。3パターンの開け方を可能にするには、外装箱にたくさんの切れ込みを入れる必要があるのですが、そうなると耐久性との両立が難しくて…。何度も物流テストを重ねて、今の仕様に辿り着きました。
ーー外装箱だけでなく、ボトルのデザインにもこだわりが感じられます。シンプルでありながらかわいらしさもあって、素敵ですよね。
谷口:ありがとうございます。「LOHACO Water 410ml」もオリジナルの金型で製造したところ、ご好評いただいたので、その世界観を210mlでも大事にしたいという思いがありました。そこで、水にまつわる自然の要素「滝、山、露、霧、雪」をイメージした5種10柄を展開することにしました。
また、アスクルは地球環境への配慮を大切にしているので、ラベルレスでかつ再生プラスチックを100%使用したリサイクルボトルを採用していることも特徴です。
ーーラベルレスなら、分別する時の手間もはぶけていいですよね。谷口さんの個人的なお気に入りポイントも教えてください。
谷口:個人的には、雪のデザインが一番のお気に入りです。どんな雪にするのかをデザイナーと相談したのですが、雪山を歩いた時に雪がキラキラと光っているような風景をイメージして、大小の雪の結晶が重なりながら舞っているデザインにしました。
ーー雪のデザイン、確かにかわいいです。実際に210mlの商品を販売後、お客様からのリアクションはいかがでしたか?
谷口:法人、個人のどちらのお客様からも「このサイズを待ってました!」というお声を多くいただけました。例えば、外で薬やサプリメントを飲む際や、就寝時に枕元に置いておくのにちょうどいいサイズ感、などのコメントを頂戴しました。
個人的には、210mlだと子どもでも持ちやすく、飲ませやすいなと感じているので、小さなお子さんがいるご家庭にもおすすめです。
本当に我々の予想を超えた活用シーンがあって、新たな気づきになっていますし、410mlと210mlを使い分けている方が多いのも嬉しいですね。210mlが加わったことで、「LOHACO Water」のご利用シーンがより一層広がったと感じています。
環境配慮へのニーズに応えるため、紙パックの飲料水も開発
ーー続いて、「mira-tera(ミラ・テラ)」開発のきっかけについても教えてください。
谷口:コロナ禍以降、紙パックの飲料商品の売上が非常に伸びていたんです。我々としては、それまで紙パックのオリジナル商品がなかったこともあって、小型のミネラルウォーターの開発に着手しました。
ーー紙パックの需要が伸びた背景は何だったのでしょうか?
谷口:個人に関しては、コロナ禍に在宅で過ごす時間が増えて、飲料品をまとめ買いするようになったことで、分別やゴミに対する意識が以前よりも高まったのではないでしょうか。
法人については、環境への負荷が比較的低く、より再生可能な紙パックを活用しよう、という意識に変わっていったのだと思います。
アスクルとしても、環境配慮への視点を重要視しているので、我々の思いと需要が重なって開発に乗り出しました。
ーーでも、紙パック入りミネラルウォーターは、店頭でまだあまり見かけないように思います。商品化する上で、何か難しい点があるのでしょうか。
谷口:理由の一つとして、水がニオイ移りに非常に敏感だといえます。現在、流通している紙パック商品の大半が、野菜やフルーツなどの果汁系のジュースなので、同じ製造ラインを使うとそのニオイが移ってしまうんです。ですから、生産できる場所が限定されてしまうのですが、アスクルではその点を解消しています。
ーーなるほど。そういった難しさがあるなかで、紙パック化を実現したんですね。「mira-tera」という名前には、どのような思いが込められているのですか?
谷口:これまでも「LOHACO Water」や「つながる天然水」というミネラルウォーターのブランドがあったのですが、今回は脱ペットボトルということで、既存のブランドとは一線を画した名前にしたかったんです。
そこで、「明るい未来を照らす」という商品テーマから名づけました。「mira」は「未来」、「tera」は「照らす」を表しています。また、ラテン語の「terra」には「地球」や「大地」という意味もあるので、それらを想起させる「mira-tera」としました。
「mira-tera」を選択すること自体が、地球を潤すという想いを込めています。響きもよいですし、一度聞いたら忘れない名前になったと思います。
清涼感を表現したパッケージ。イラストは、山々に降り注いだ雨水が、地下に流れて浸透していくようなイメージだそう
ーー他にも、特徴的な点はありますか?
谷口:水質にもこだわっていて、日本三大酒どころと言われる京都・伏見の水を使っています。既存の紙パック入りミネラルウォーターは、硬度の高いものが多かったのですが、「mira-tera」は硬度57mg/Lの軟水なので、日本人に馴染み深く口当たりもいいと思います。
ーーこちらの商品についても、谷口さんの個人的なお気に入りポイントをぜひ教えてください。
谷口:特に、ロゴとネーミングが気に入っています。外装箱も気に入っていて、印刷された白いロゴが茶色の外装箱に映えるな、と自画自賛しています(笑)。それから、「mira-tera」は紙パック入りミネラルウォーターの中で最安値ということも、大きなポイントです!

